太宰について

一番好きな作家というか創作物というか世界というか、なんて言えばいいか分からないけれど、私の中で太宰治はめちゃくちゃ独立したポジションにいる。好き。大切。ありがとう。ありがとうございますって感じ。ていうのも今日桜桃忌。忘れてた。点滴打たれてた。さっき浴槽の中で思い出した。

好きな作家は、って聞かれて、太宰治!って答えづらい。だから、江國香織とか島本理生かな〜って言う。“女“の読み物、江國香織有川浩とか伊坂幸太郎とかかな〜のパターンもある。小説ライト層。大体聞いてきた相手に合わせて答えちゃう。人生そんな感じ。太宰治って答えるのは、好きなミュージシャンは、で尾崎豊って答えるのと同じ。尾崎豊は音楽界での太宰治。別に堂々としてればって言われればそこまでなのだけれど、やっぱちょっと恥ずかしい。音楽も、知り合って浅い人に聞かれれば、YUKIって言うし、年配に聞かれたらJudyandmaryて答える。最初から私の核心を見れるなんて思うなよっていう。自惚れ。

好きなものを言語化することほどナンセンスなことはないと思うんだけれど、敢えて太宰治のどこがいいのって言われたら、崩壊美。なにかしらが崩壊して行く様をこんなに丁寧に、しかも崩壊とは別のところに主題を置きながら丁寧に書けるなんてって思う。でもそれは後付けの理由で、なんで好きなのって言われたら、読んだ時に好きだとおもったから、しかない。それ以上は人に伝えるためのパチモン感性。

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無理やり、“今“との繋がりを見出すとしたら、最近自伝漫画流行ってるよね。はじまりは、寂しすぎてレズ風俗に行きましたレポ(永田カビ)、同時に、母がしんどい(田房永子)。そっから、だーっと。最近だと、脱エホバの証人系が多いような気もする。でもそれらの超先駆けって多分太宰治。あそこまで自分語りを美しく書く人いない。でも最近、twitterで病み漫画をあげている作家さんが、読者の人に、どうしてそんなに自分の心の中を惜しげもなく開示できるんですか?って聞かれていて、暗くて病んでいるからといってそれが私の心中とは限らないです、て答えていて、そりゃそうだなあと思った。いやきっと太宰のはきっと心中なんだけれども、道化っていうのを自分の生涯を包括する上のキーワードのひとつとして挙げているぐらいだから、本人は自己理解能力に乏しいんだろうな。

死人に口なし。だから故人の文章は好き。江國香織も好きだけど、生きてるから、文章から女やらゼックスやらの匂いが生々しくする。故人の文章はどんどん化石になって標本になって磨かれていくからほんとうに綺麗だなと思う

特に斜陽とヴィヨンの妻が好きです